2018年01月01日

短編・ショートショート 目次(2018)

これは、2018年分の短編・ショートショートの目次ページです。

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□総合目次――――総合目次

女子キ 2018/02/18 ぴかぴか(新しい)NEWぴかぴか(新しい)
ごりやく 2018/02/04
鬼の名前 2018/01/28
南岸低気圧 2018/01/21
白い塊 2018/01/14
しょうもない 2018/01/07
あけましておめでとうございます 2018/01/01
posted by くまのすけ at 22:02| Comment(0) | 短編・ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

あけましておめでとうございます




クリスマスイブに気が付いた。俺は里菜が好きだって。
あの日、バイト先のコンビニからの帰り、同じシフトで働いていた友人の野本と別れて、住宅街のあちらこちらに点在する個人宅のイルミネーションを眺めながら自転車をこいでいた。
大山さんのサンタを横目に角を曲がり、そのまま駅の方へ進めば我が家の方向。
けれど、その角を曲がった先で出会ってしまったのが里菜だった。
一人じゃなかった。見たこともない年上の男性と並んで歩いていた。顔一杯の笑顔を男性に向けて楽しそうに話しかけていた。
俺は素知らぬ風を装って通り過ぎる。なぜか心臓が痛い。だれかにギュッと鷲掴みにされているみたいだ。
通り過ぎ、振り返る。そしたら、ちょうど里菜の方も俺を振り返って見ていた。
でも、すぐにさっきみたいに隣の男性の方を見上げて笑い声を上げた。
動揺する気持ちを抑えて、俺はそのまままっすぐに家の方へ向かっていった。


だれだ? なんで、里菜があんな年上の人と? 付き合ってるのか?
頭の中をいろんな疑問がぐるぐる回り続けていた。
そもそも、なんでそんなことが気になるんだ? 里菜はただの小学校以来の同級生ってだけなはずなのに・・・・・・
朝、登校したときにおはようの挨拶や、帰りにさよならの言葉を掛けるぐらいしか接点がないのに・・・・・・
だから、別に里菜が誰と付き合っていようが、そんなの俺には関係がないはずなのだ。
でも、なんで気になるんだ? なんで俺、今すごく動揺しているんだ?
深く考えるまでもなく、すぐに気が付いた。里菜が好きなんだってことに。
冗談じゃない。あの里菜だぞ? 勝ち気でくそ生意気で、それでいて泣き虫で。
必死に否定しようとすればするほど、里菜のことがどんどん気になってくる。
大体、あれはだれなんだ? 里菜の恋人なのか?
どうしても知りたくなる。けれど、里菜の連絡先を俺は知らない。次会った時に問いただす? けど、そんなことできない。俺たちはただの同級生にすぎない。じゃ、どうすれば・・・・・・
そんなことを延々と考え続けて、結局その夜眠りに落ちたのは明け方近くのころだった。
だけど、問題は翌日の朝、あっさり解決した。
冬休み中で遅くに起きた俺が朝刊をとりに玄関先に出た時、家の前でその里菜と出会ってしまったのだ。
「お、おはよう」「おはよう」
「散歩?」「う、うん。そんなところ」
「「・・・・・・」」
どう切り出そうか迷って黙り込んでしまう。気になる。どうしても知りたい。そんなことを頭の中で思って、ぐずぐずとその場を離れることができないでいた。そしたら、
「昨日のあの人、私の叔父さんだから。家にクリスマスプレゼントを持ってきてくれただけだから」
だそうだ。
俺はホッとしていた。思わず白い歯がこぼれていた。そんな俺の顔を里菜もなにか言いたそうにのぞき込んでいた。そして、どこか里菜の方も安心したような顔だった。
で、この際だからダメもとでと連絡先の交換を申し出たら、あっさりオーケーしてくれたのだ。
もちろん、それは俺にとって今年一番のクリスマスプレゼントだった。
そんなこと恥ずかしいから誰にも言えないことだが。


とはいえ、連絡先をゲットしたからといって、すぐにやり取りをするってわけにはいかないよな。
なんてためらっていたら、里菜の方から先にメッセージが届いた。
すごくありふれた当たり前の挨拶。
でも、それがすごくうれしかった。勢い込んで少し長めの返事を書いて、でもすぐに消した。どうなんだろう? これじゃヘンに気負ってるってバレバレかな? もう一度書き直して、また消した。結局、こちらも無難で当り障りのない一言を返すのに三十分近くかかった。
なかなか返事を返さないから呆れているかな? それとも、怒っているか?
でも、里菜からの返事はすぐだった。まったく、怒っている様子もない文面だった。
そうやって、時間をかけて何度もやり取りして。バイト中も家にいても野本たち友達と遊んでいてもスマホが気になっていた。里菜からのメッセージが届かないかいつも心の片隅で期待していた。
そして、どうにかして新しく発見したばかりの俺の気持ちを届けられないかそればかり考えていた。
そんなこんなで、いつの間にか時間ばかり過ぎて大みそかになっていた。
クリスマスに気が付いた思いをずっと抱え込んだまま、年を越すハメになっていた。


明日から新年だから思い切って初詣でに誘ってみるか?
けど、今年は仲の良い前田と一緒に初詣でにいったらしいし、来年もそのつもりみたいなことを冬休み前に言っていたような気がする。
俺と付き合っているわけでもないのに、誘ったら迷惑か?
大体、こんな風にスマホでやり取りしている男って、俺だけってわけでもないだろう。おそらく、俺以外の男ともやり取りしているんじゃないだろうか? 俺なんかよりもはるかに友人の多い里菜にとって、男と連絡を取り合うのは、もしかすると特別なことなんかじゃないのかもしれない。だから、俺が連絡先の交換を頼んだ時、あんな風にあっさりとオーケーしてくれたのかもしれない。
たぶんそうだ。きっとそうなんだろうな。
一方的に舞い上がりそうになる心をなんとかなだめながら、里菜から届いたありふれたメッセージを見返して、もんもんとしてばかりいるうちに、結局誘いそびれてしまった。
そうこうするうちに、元旦になり、去年同様、家まで野本が初詣でに誘いにきた。
ふざけ合い、今年も野郎だけでつるんでいることを嘆きあいながら、近所の神社へむかった。神社の大鳥居をくぐり、参道をすすむ。そして、財布から百円玉を取り出して、参拝客の列の最後尾にならぶ。
「おっ、前田がいるじゃん」
「ん? どこ?」
「ほら、あそこ、梅の木のところ、枝におみくじ結んでるだろ。おーい、前田ちゃ〜ん」
野本は前田の名を呼びながら列を離れて行く。しかたなく、というかちょっと期待しながら後を追ったのだが。
「あれ? 後藤は? 今日は一緒じゃないの?」
「リナ? うん。あの子、今、家にいるよ。待ってるって」
と、二人して俺のことを見つめてくるわけで。二つの顔が一様ににやけて迫ってくる。四本の腕が俺の体を押さえ、強制的に回れ右させる。
そして、ひときわ大きな音を立てて、野本が俺の背中を叩いた。
力一杯の突き。体のバランスがくずれて前のめりになる。転倒する寸前に踏みとどまって、でもそのまま足を前に前にだしつづけた。そして、顔を上げ青空が目に飛び込んでくる。
俺は走り出した。
「いってこいっ!」
「いけー!」
背中に叫ぶ声を受けながら。はやる気持ちに急かされて、何度もつんのめりそうになりながら走った。
この気持ちを君へ、君のもとへと運ぶために。



「ってかさ、野本ってリナのこと」
「さあ。なんのことかな。忘れた」
「そう? じゃあ、そういうことにしといてあげる。でも、一応、教えてあげるけど、私、小六のときから中島くんっていいなって思ってたんだ」
「・・・・・・えっ? それは・・・・・・ なんて言ったらいいか。とりあえず、ご愁傷様」
「そっちもね」
そうして、野本と前田は、同じようなどこか吹っ切れた晴れやかな表情を浮かべるお互いの顔を見つめあいながら、微笑みを交わしていた。
「あ、そうだ。まだ言ってなかったよな。あけましておめでとうございます」「おめでとうございます」
「本年もよろしくお願いします」「こちらこそ、よろしくお願いします」


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posted by くまのすけ at 21:57| Comment(0) | 短編・ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月24日

レストランでディナー




レストランの駐車場に止めてあった国産車を見た時から、嫌な予感がしていた。
あちこちにへこみや傷があるつい最近もどこかで見たことがあるような赤い車。具体的には、我が家のガレージあたりで・・・・・・


「はぁ〜 なんでこんなことに・・・・・・」
「大丈夫?」
「あ、うん。大丈夫」
私の向かいで竹内君が心配そうな顔をしている。大学の同じゼミの同級生。以前から気になっていたのだけど、ようやく先週、向こうの方から今日のデートに誘ってくれたのだ。
けど、なにやってんだろう、私。
竹内君との会話に集中できない。すぐ後ろの席から聞こえてくる会話が気になって気になって。
「でさ、娘がさ、これがまたお節介なやつでさ」
誰がお節介よ!
「死んだ女房にそっくりなヤツでさ」
よかったじゃない。ひとめぼれの末に猛アタックかけてゴールインしたってのちゃんと知ってるんだから。
私の背後の席で父と食事をしているのはまだ紹介されたことがない人。もしかしてこの人が近所で噂になっている例の恋人なのかしら?
私が大学進学を機に家を出て一人暮らしを始めた途端、あちこち遊び歩いているって聞いていたけど、どうやら本当のことらしいわね。
まあ、母が亡くなってからずっとひとりで私のことを育ててくれてきた人だから、私に手が掛からなくなったのだし、別にいいのだけど。でも、なんだかなぁ
面白くない気分で目の前のお肉にずぶりとフォークを突き挿した。


「教授がさ、工藤さんのレポートを・・・・・・」
「・・・・・・」
「珍しく褒めててさ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「ん? なに? ちゃんと話聞いてるよ」
「・・・・・・」
ちょっと気まずい沈黙が私たちのテーブルを覆っていた。
冷めかけたパスタがちょっと味気ない。
一方で後ろの席からは耳障りなだみ声。
「あいつ、ちゃんとメシ食ってるのかな。いつもダイエットとか言って小鳥のエサぐらいしか食わねぇの」
ホント、このパスタ小鳥のエサみたいね。
「はぁ〜」
「・・・・・・」
竹内君、困ったような顔してため息を連発している私のことを見ていた。
折角誘ってくれたのに、ごめんなさい。本当は、誘ってくれた日から、私、ずっと今日のことを楽しみにしてたのに・・・・・・


味なんてまともにわからずにデザートを食べ終え、最悪の雰囲気のままコーヒーを口に含む。
――今日はごめんなさい。
心の中で竹内君に謝るのだけど、そんなことよりも、後ろの席の様子の方が何倍も気になる。
「あいつが入れてくれるコーヒーがこれまた絶品なんだよ。いろいろ飲み歩いたけど、どこの店も及ばないんだよな」
うん、本当、ここのコーヒーも悪くはないんだけど、まだまだ改善の余地があるわね。豆のむらし具合とか、その他いろいろと。
「ごちそうさま」
竹内君は口の中でちいさくつぶやいて、空のカップを置いた。唇を噛んで、うつむき気味。
本当、ごめんなさい。
私も、カップを空にして、テーブルに置く。それから、目を閉じて、開いた時には決心がついていた。
「ごめん、竹内君」
もう視線を合わそうともしてくれない竹内君を残して、歩いて行く。
「お父さん、こんなところでなにしてるのよ!」
「エリ! なんでこんなところにっ!」


父と食事をしていたのは、職場の部下なんだそうな。別に付き合っているわけじゃなく、先日の仕事ですばらしいサポートをしてもらったお礼に食事へ誘ったのだとか。
「職場でも課長、お嬢さんのことを自慢ばかりしているんですよ。ほれぼれするぐらい綺麗だとか、すごく気立てがいいだとか。ええ、でも、こうして会ってみると、本当のことですわね。オホホ」
「野上くん、それは・・・・・・」
父は照れて頭を掻いている。デレデレだ。
うん、まあ、さっきまでの会話を聞いていれば、なんとなくわからなくもないかな。ずっと私のことばかり口にしてたし。ホント、親バカで子離れができてない人なんだから。
でも、ちょっとうれしいかな。うふふ。
なんて、思わず白い歯をこぼしてしまったりして。
だけど、父は急に険しい顔を私に向けてくる。
「ところで、エリ、一緒にいるのは誰だい? もしかして?」
竹内君、今日は、本当に、本当に、ごめんなさい。


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posted by くまのすけ at 17:46| Comment(0) | 短編・ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする