2017年07月23日

カムフラージュ




部活帰り、校門を出たところで、先を歩いているおさげ姿を見つけた。
「よっ、今帰り?」
千秋が振り返って、眼鏡の奥の目元をほころばせた。
「うん、昇ちゃんも帰り? 一人?」
「ああ、広美ちゃん、バイトがあるって、先帰った」
「そうなんだぁ 二人順調?」
「ああ。おかげさまでな」
先月、千秋たちの協力もあって、俺はずっと想っていた広美ちゃんと交際を始めることができたのだ。
「そっちは? 今日は一人?」
「あ、うん。圭ちゃんまた体育館裏に呼び出されてる」
「はぁ、またかよ」
「今月三回目」
二人して苦笑をもらすしかなかった。


圭一郎と千秋と俺は幼稚園からの幼馴染みで、圭一郎と千秋は中学の時からずっと恋人同士だ。
だが、舞台俳優をやっている両親の血を受け継ぎ、圭一郎は俺からも見てもほれぼれするような二枚目だった。だからか、子供のころから、毎週のように女子たちから人目につかないところへ呼び出されて、告白されていた。
「千秋と付き合ってんだし、呼び出されても行かなきゃいいのに?」
「そういうわけにもいかないわよ。圭ちゃんって優しいもの」
「へいへい、そうですか」
「そうよ」
口元はウフフと微笑んでいるが、目が笑ってないんだよねぇ これが。
「じゃあ、これからいつものファミレスで待ち合わせ?」
「うん、そう。昇ちゃんも来る? 昇ちゃんだったら圭ちゃんもよろこぶと思うし」
「ああ、じゃあ、お邪魔虫だけど」
というわけで、千秋と二人、すこし回り道していつものファミレスで圭一郎が来るのを待つことにした。


「千秋もコンタクトとかにしてみたらどうなの?」
「うん。私もそうしてみたいの・・・・・・」
俺の前の席に座りながら、ストローを口にくわえ、ジュースを一口飲む。
言葉を濁しているが、圭一郎が反対しているのだろうな。あいつの初恋の相手は小学校五年生の時の女の先生だった。その先生、いつも眼鏡をかけて、おさげだった。今の千秋そっくりに。
「やっぱ、そういう地味な格好だから、あいつの恋人だって言っても誰も信じないんだろう?」
「うん。私もそう思う」
圭一郎と千秋、学校でも恋人宣言し、手をつないだり、教室の中で抱き合ったりと、ラブラブな様子を見せつけているというのに、今日のように一向に他の女子たちは告白を止めようとはしない。どうやら、他の女子たちを牽制するために圭一郎が千秋と付き合っているフリをしているだけだと認識されているようだった。
「いっそのこと、教室の中でキスとかしてみれば?」
「ああ、それ前に試したことある」
「あるのかよっ!」
「でも、圭ちゃん、先週だって廊下で三年の先輩とか突然唇奪われたりしてるし」
「ああ、あったな、そんなこと」
「もうキスぐらいじゃ、全然効果なんてないの」
そう言って深く深くため息をつくのだった。
「た、大変だな」


その日は、そんなことなどを話したりしてファミレスで時間をつぶし、その後、圭一郎と合流して三人で帰ったのだが、二日後、登校すると掲示板に人だかりがあった。
『カムフラージュ女、ゴリラと密会!?』
なんて見出しの壁新聞が貼られている。
添えられた写真は、こないだのファミレス内での俺たちで。
だれがゴリラだってんだよっ!
それに、千秋と密会って。あの時、窓のすぐそばで外から丸見えの場所だったのに・・・・・・
記事の内容は、学園のアイドル圭一郎と地味女千秋が付き合っているというのは真っ赤な嘘で、本当は千秋は俺と付き合っており、千秋と付き合っているフリをしているのは圭一郎が女子からの告白を断るための方便だという噂を肯定するものだった。
つうか、じゃあ、そもそもなんで圭一郎は女子からの告白を断ってんだよってな当然の疑問がわくのだが? それに対する答えらしきものは特になかった。
一緒に登校したはずの圭一郎はというと、さっそく学校中の女子たちに囲まれて、身動き取れない状況になっているし。
――はぁ しゃーない、助けてやるか。
朝一から女子の群れを掻き分けて、圭一郎を救出しなくちゃいけない羽目になってしまった。
「まいったな」
「どうすんだよ。千秋、悲しむぞ」
「分かってる」
どうにかこうにか、しつこい女子たちを振り切って空き教室へ逃げ込むと、圭一郎はほとほと困っている様子で、眉を八の字に寄せていた。
「どうしたものか」
二人して首をいくらひねっても名案が浮かぶことはなかった。


というわけで、放課後。
俺たちは、千秋がカムフラージュ・カノジョに認定されてしまった今、圭一郎には女子たちからの告白や呼び出しが殺到するものだと、半ば覚悟していたのだが、
「帰るぞ」
「ああ、ちょっと待って、千秋から先にファミレス行って待ってるってメッセージ来てる」
「ん? 俺の方も着信。広美ちゃんからか。広美ちゃんもファミレスで待ってるって」
静かなものだった。結局、その日、だれも圭一郎を呼び出したり、告白しようとする女子は現れなかった。
その代り、その日は圭一郎ではなく、何度も女子たちが俺を呼び留めてきた。
「頑張ってね。私、応援してます」
どの女子も妖しく眼の奥を光らせながら。
なんなんだろう? なにをがんばれっていうのだろう? わけがわからない。
そんな風に女子たちの雰囲気が変わったのって、思い出してみると昼休みからか。いつもよりも妙に女子たちがスマホを熱心にいじっていたように思う。
とすると、なにか女子たちの間だけで情報のやり取りがあったのかな。千秋以上に効果的なカムフラージュななにかの。


なぜか遠巻きに見守る女子たちに見送られて、俺たちは校門を後にした。
しばらくして、並んでファミレスの自動扉をくぐる。いつもの窓際の席に見慣れたおさげとえくぼの浮かぶ愛らしい笑顔が見えた。
「やっぱり、昇×圭が鉄板でしょ?」
「ええっ? 絶対、圭×昇一択よ」
「それ、ないわぁ」「圭×昇のリバースなんて邪道よ!」
そこでは、スマホ片手に白熱したバトルが交わされていた。不毛で明確な結論なんて存在しない彼女たちの秘められた世界の。


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2017年07月09日

聞こえない音楽を




「そうね。コレとコレとコレ、二つずつ」
「ショートケーキとモンブラン、フルーツケーキが二つずつですね」
ケーキサーバーで注文されたケーキをすくい上げ、手元のトレイに見栄えよく並べていく。注文が終わったのを確認してから、組み立てた箱に詰め替えるのだ。
「ねぇ、ママ、ぼく、このチョコレートのがいい」
お客さんの連れている子供がエクレアを指さした。母親の方を見ると、苦笑しながらも頷いていた。
「じゃ、それも一つお願い」
そうして、七つのケーキを丁寧に箱に詰め、レジで代金と引き換えに手渡す。
「ありがとうございました」
親子連れが店を後にした後、樹里さんが私に声をかけてくれる。
「もうだいぶ慣れたみたいね」
「あ、はい」
叔父がパティシエをやっているケーキ店でバイトするようになって、今日で三日目。人手が足りず、夏休みが始まるまででいいからと頼まれたのだけど、やはり、なかなかに忙しい。お客さんが入れ替わり立ち替わり入店するので、先輩バイトの樹里さんとふたり朝からてんてこ舞いだ。
またお客さんが店に入ってきた。
「いらっしゃいませ」


樹里さんは同じクラスの森川君のおねえさん。そのことに気が付いたのは、働き始めてすぐのことだった。
「さやかちゃんと同い年の弟がいるの。学校も同じだから、ひょっとして弟のこと知ってるかも?」
そう尋ねられて、すぐに思い出したのは、だれもいない音楽室で無心にピアノを弾いている姿だった。
あの放課後の音楽室で、教室ではいつもどこかボサッとしているのに、真っ赤な夕焼け空に影を浮かばせて、さっそうと難しい曲を弾きこなしていたのだ。無骨な大きい手だけど、細くて長くてすらりとした十本の指をひらひらと舞い踊らすようにして八十八の鍵盤を叩いていた。
まるで、心の中の声にならない言葉を音として紡ぎ出すかのような曲。胸が締め付けられる切ないメロディ。
あの音楽室の光景を目にして以来、私は森川君の指先を目で追うようになってしまった。
そうすると、教室でも廊下でもどこでも、よく鍵盤を叩くような仕草をしていることに気がついた。今までそんなことに全然気が付いてなんかいなかったのに。
それがおかしくて、バカみたいで、ちょっと胸がキュンとして・・・・・・
――あっ、また何もないところで鍵盤を叩いてる。
――今、どんな曲が森川君の頭の中に流れているんだろう。
――今日は朝から眠たそう。昨日は遅くまでピアノの練習をしていたのかしら?
いつの間にか、そんなことばかり考えている私がいた。


「いらっしゃいませ」
またお客さんだ。先に来ていたお客さんの清算を私がしていたから、樹里さんが接客してくれる。
「よっ、ねえちゃん」
「なんだ、裕一か。なに? なんか用?」
「なんか用って。ケーキ屋に来たんだから、ケーキ買いに来たに決まってんだろう」
「えっ? あんた、ケーキなんか買うの?」
「ケーキなんかって」
森川君、苦笑している。レジのところでケーキの箱を清算を終えたお客さんに手渡すことを忘れて私が立ち尽くしていることにはまだ気が付いていないみたい。
そして、その森川君のとなりには・・・・・・
「ね、美乃梨ちゃんはどれがいい?」
「ん〜 そうね。ショートケーキとチョコレートケーキは外せないわね」
ちょこんと首をかしげて、森川君に柔らかい微笑みを向けている。
見るからに二人は幸せそう。絵にかいたような恋人同士だ。注文の間もずっと手を握り合っている。
そ、そうよね。森川君だって男の子だもんね。彼女さんぐらいいるわよね。
胸が痛い。
お客さんがした咳払いのおかげで、まだケーキの箱を手にしたままだったことを思い出し、手渡した。
その間にも、森川君とカノジョは樹里さんにケーキを注文していく。
まだ、レジのところで立ち尽くしている私には気が付いていない。


注文が終わり、樹里さんは手早くケーキを箱に詰めていく。
その最中、一瞬、私と眼が合った。途端にハッとした顔で目を見開いた。でも、すぐに元の表情に戻った。
私は背を向け、森川君の視界から隠れるようにこそこそとそこらのモノの整理を始める。手の震えがとまらない。ぎゅっと目を閉じる。それでも、耳は聞こえていた。
ケーキを詰め終え、樹里さんがレジの方へ移動してきた。
「はい。しっかりと持つのよ。傾けたりしちゃダメよ」
「子供かよ」
森川君が樹里さんからケーキの箱を受け取ったようだ。
「それはそうと、その子は?」
「ん? ああ、ほら、ねえちゃんも知ってるだろ。ピアノ教室の美乃梨ちゃん」
「えっ? ああ、立花美乃梨ちゃんか。誰かと思ったわ。私が知ってたのって小学生ぐらいまでだから。私、ピアノ教室やめちゃったし」
樹里さんも知っている女の子だったみたい。
ひとしきり『おひさしぶりです』と挨拶を交わしていた。
「じゃ、行こうか」「うん」
そうして、森川君たちは店を出ていった。
「そっか、裕一ってあの小っちゃかった美乃梨ちゃんとか・・・・・・」
その背を見送りながら、樹里さんが感慨深げに口の中でそうつぶやいていた。


「大丈夫。なんなら、奥で休憩しててもいいよ」
「平気です。大丈夫です」
樹里さんが困ったように眉根を寄せている。森川君たちが見えなくなってすぐに、心配そうにそう話しかけてきてくれたのだ。
あの森川君にはすでに彼女がいたなんて・・・・・・
同級生だから、教室で毎日顔を合わせる。何度もチャンスがあったはずだ。だけど、私は一度も。
後悔ばかりが押し寄せる。あのとき、ああしてたら、今頃森川君の隣を歩いていたのは私だったのかも。
ケーキを一緒に買っていたのは私だったかも。
ショーケースのこちら側ではなく、あちら側で照れくさそうに微笑みを交わして。
「大丈夫?」「平気です」
「そう?」
その日は何度かミスをした。それでも、バイト時間の終わりまで働いた。


「おはよう」「おはよう。どうしたの?」
「えっ?」
「目のまわり赤くなってる」
「ウソ」「ほら、鏡」
教室に入った途端、智美が私を心配して手鏡を渡してくれた。
たしかに目のまわり赤くなってる。昨日の夜、一晩中ベッドの中で泣いたから仕方ないのだけど。でも、ちょっとひどい顔。
情けなくて、みっともなくて、みじめな顔。ヘンな顔。間が抜けてる。
鏡の中のぶさいくな顔を眺めていたら、つい噴き出してしまった。
「あはは。ひどい〜」
指でそっと眼尻をぬぐう。
今日もまた、鏡の隅に写り込んでいる指が細長い少年が何もないところで鍵盤を叩いていた。
だれかに聞かせる曲を。私には聞こえない音楽を。頭の中で。
にじむ視界の中で今日も無心に奏でている。


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2017年07月02日

誕生日、いつ?




「こないだカレシがさぁ」
くじ運なく、先月の席替えで一番前の席になった俺の真ん前で、女子たちが集まっておしゃべりの花を咲かせている。
というか、なんでわざわざ俺の前、教卓の横に集まるかなぁ 自分たちのうちの誰かの席にでも集合すりゃいいだろうに。
おかげで、昨日遅くまで期末テストに向けた勉強をしていたせいで眠たいのだが、うるさくて居眠りすらできやしない。まったく。
ふわぁあああ〜〜〜〜


「私の誕生日あったじゃない。そしたら、ほら、これ、プレゼントしてくれたのぉ いつかちゃんとした宝石のついたのを交換しあおうねって。それまではこれって言ってさ」
「わぁ、かわい〜 似合ってるぅ」
「かわいぃ」「すご〜ぃ」
女子のひとりが彼氏にもらったという指輪を見せびらかしているのだが。うん、控えめにいって、彼氏さん、センスないよね。
「いいなぁ こっちは全然、そんなの忘れてるっぽいし」
「えっ? それやばいんじゃない?」
「沙也って、誕生日、来週でしょ?」
「うん。やっぱ、そう思う?」
「思う、思う」
いや、兄貴、ちゃんと用意してるし。きれいにラッピングした包みを家族にも見つからないようにベッドの下に隠してるし。
その沙也と目が合ってしまって、思わず苦笑してしまった。


「で、どうなの。沙也の誕生日プレゼント、ちゃんと用意してるの?」
放課後になり文芸部の部室に顔をだすと、先に来ていた絵梨が発した第一声がこれだった。
「はぁ? なんで俺に訊くわけ?」
「アンタに訊くのが一番手っ取り早いでしょ。同じ家に住んでいるんだから」
「そんなの知るかよ」
「ひっどーい」
「ひどくない」
はぁ、なんで俺がそんなことこいつに話さなきゃなんねぇんだよ。俺の兄貴の問題なのに。
しかし、弟の同級生の女子と付き合っちゃう兄貴って、どうなんだよ? それに、同級生の兄貴だって知ってて付き合っちゃう女子って?
場合によっては、将来の義姉が同級生・・・・・・
いや、まだ気が早いよな。まさか、そんなことないよな。いくらなんでも。
「そんなことより、そっちはどうなんだよ? そっちは親友なんだろ? プレゼント交換とかしないのかよ」
「さて、もうすぐ期末だから、勉強でもするかな」
「話はぐらかしやがった」
「あいひあなっしんぐ」
はぁ〜 まあ、俺だっていくら親友だとしても誕生日プレゼントを贈ったりもらったりはしないけどな。


文芸部の部室。試験前で部活動は休みだから、本来は顔を出さなくてもよさそうなものだが、あいにく自習室がいっぱいだった。で、ここなら静かだし試験勉強がはかどるだろうと期待してきたのだが。必ずしも静かとは言えないようだ。
「うぇんいずいっつゆあばーすでぃ?」
真剣な顔で教科書を見つめながらつぶやいている。教科書の例文を読んでいるのか? けど、そんな英文なんかあったかな?
ざっと昨夜勉強したばかり英語の試験範囲を思い返してみても、そんな英文なんて登場した覚えはなく。
となると、もしかして、俺に質問しているとか?
でも、教科書の例文を読み上げている風に見えるわけだし。
これはどうすればいいんだ? 無視するか? そんなことすると怒り出しそうな気もするし、じゃあ、声をかける? 絶対、教科書読んでいただけよって鼻で笑ってくるだろうな。こいつはそんなヤツだ。
どうすれば・・・・・・
逡巡していたのは、一瞬で、俺は素直に自分の誕生日を口にしていた。
「あいむじゃすとりーでぃんぐいんぐりっしゅてきすとぶっく」
「うそつけ。そんな文章なんて英語の教科書にないだろうが」
俺の指摘に、してやったりとでもいうような、にんまりとした笑顔を向けてきやがった。
「ひあ.れっつりーど」
“When is it your birthday?”
あったし・・・・・・
うわぁああああ。恥ッ。


「っていうか、そこ試験範囲じゃねえぞ!」
「えっ? 何で知ってるの?」
「俺、昨日の夜、勉強したし、英語」
「うそ! ありえなーい。いつも試験前でも勉強なんてしないくせに」
「するよっ」
「礼次のくせに、なまいきぃ」
「お前なぁ」
でも、まあいいか。俺に見られないように手のひらで隠しているけど、ノートの端っこにさっきの俺が口にした日付をメモってるの見えてたし。
「えにーうぇ、うぇんいずいっつゆあばーすでぃ?」
絵梨の横顔をじっと見つめてたら、しだいに赤みが増していった。そして、一言だけつぶやくのを聞き漏らしはしなかった。
「ちょうど一か月早いのかよ」
まだまだ先だけど、しっかりその日付を俺の頭の中に焼き付ける。
「そうよ。私の方がアンタよりもお姉ちゃんなんだから」
「たった一か月だろう」
「一か月もよ」
勝ち誇ったようなその顔を見てたら、正直バカらしくなった。いや、実際にバカらしいことを言い合っているんだけど。
「分かったよ。はいはい、絵梨お姉ちゃん」
「分かればよろしい、弟の礼次くん」
そうして、即席姉弟二人して白い歯をこぼした。


「そっか、一か月早いのか」
「そうよ。誕生日のプレゼントは何でもいいわよ。かわいいアクセサリーとか、かわいいアクセサリーとか、かわいいアクセサリーとか。なんでも」
「アクセサリーばかりじゃねぇかよ」
「ふふふ」「ったく」
今度の休みにでも店のぞいてみるかな。アクセサリーならなんでもいいのだろう。指輪とか、指輪とか、指輪とか。教室で自慢してたのよりも、もっとカッコイイやつ。いざとなれば貯金があるし、多少高いものでも大丈夫かな。
あれこれ算段してたら、ふっと頭の中を一つのフレーズがよぎった。先週読んだ本の中に登場した言葉だ。
牧師が語る厳かな誓いの言葉。
「ちょうど一か月年上なのな。これから先も、永遠にずっと・・・・・・ 病めるときも、すこやかなるときも、貧しい時も、富めるときも、死が二人を分かつまで」
目が合ってしまって慌てて伏せあった。なにごともなかったように装いながら。
お互いの頬がバラ色に染まっているのを目にしないようにして。


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