2016年11月27日

一緒に帰る




自転車を押しながら歩く少年の前を少女はうしろ向きになって歩いている。くるくる表情を変え、少年のかける言葉に時に笑い声を上げる。
二階の教室の窓から見ていても分かる。あの二人はお互いに好意をもっている。もしかすれば、すでに告白して付き合っているのかもしれない。いや、こうして二人で一緒に帰るのだから、むしろとっくに恋人同士なのだろうか。
俺は素直にうらやましいと思った。そして、妬ましいと。


「いいよな、あの二人」
「ああ、三組の三浦と田辺だろ。仲いいよな」
「そうなのか」「知らなかったのかよ。あの二人いつもあんな感じだぜ」
「へぇ〜」
「でも、あれでまだ付き合ってるわけじゃないんだとさ」
「はぁ? なにそれ? ウソだろ」
「いや、ホント。あいつら、いとこ同士だって」
「・・・・・・」
いや、いとこでも付き合ったりできるし、なんなら結婚もできる。
「あ、でも、三浦の方は確か彼氏がいるらしいぞ。なんでも近所の大学生と付き合ってるらしい。田辺の方は知らんがな」
「って、なんでそんなにあいつらのこと詳しいんだよ」
俺の目の前で洋一がうっすらと微笑んだ。ちょっと気持ち悪い感じだ。
「まあな。一年のときに田辺と同じクラスだったからな」
「ああ、なんだ。それでか」
「あの二人、一年の時からずっとあんな感じで、帰りいつも三浦の方が他のクラスからわざわざ田辺を迎えに来てたんだ」
「そっか」
「ああ」
そうして、二人して同時にため息をつくのだった。それでもやっぱりうらやましいと。


「ほんじゃ、そろそろ帰るか」「だな」
「どっかよってくか?」
「いや、今日はまっすぐ帰る。金ないし」「そっか。俺もねぇや」
そうして、俺たちはそれぞれのカバンを担いで自分の机から離れた。
教室をでて、長い廊下を歩き、階段を下りて、昇降口へ。下駄箱に上靴を突っ込んで、そのまま並んで駐輪場の方へだらだらと移動していった。
どうでもいいことをだべり、くだらないジョークを飛ばし、バカみたいに笑い合う。そして、ふざける。いつもの俺たちだ。
隣にいるのが同性の友人でなく、女だったら・・・・・・
考えるだけで虚しくなる。だから、考えない。たぶん、洋一も今の俺と同じだろう。気の合う仲間だ。
のろのろと自分たちの自転車を引っ張り出し、同じ方向へ向けてペダルをこぎ始めた。
冬の初めだが、すでに風は冷たく、手袋なしの手はかじかんで痛いぐらい。そろそろ押し入れの中をひっくり返し、手袋やマフラーなどの防寒グッズを探さなきゃとは思うだが、正直億劫で、結局家についたらまだいいやと思ってしまう。
もうちょっと寒くならないと、まだ踏ん切りがつかない。まだ我慢できる範囲内の寒さだ。
「寒いな」「ああ」
同じように手袋をしていない手を寒風にさらして、隣で洋一も自転車を漕いでいた。


「おっ、あれスミレちゃんじゃね?」
洋一が指さす先を見ると、中学の制服を着た少女が田んぼの中を歩いている。確かに見慣れた姿。俺の妹のスミレだ。
「おーい、スミレちゃーん。久しぶり」
すぐに向こうも俺たちに気が付いた様子で、
「わぁ、洋一くんだぁ おひさぁ」
人懐っこい笑顔を浮かべながら子犬みたいに駆けてくる。
「スミレちゃん、転ぶなよ」「大丈夫だよ。私、もう子供じゃないんだもん」
なんて言い合っているうちに、なにもないところでつまづいてるし。
「ほら、言わんこっちゃない」
「セーフだもん。こけなかったもん」
「そういう問題じゃねぇだろ」
俺たちの自転車の前に回りこんで、くるくる変わる表情を浮かべ、屈託のない笑顔を向けてくるのだった。ただし、俺の隣へ。
って、おーい。お兄様の方は無視かよ。


スミレは、後ろ向きに歩きながら、洋一がかける言葉に大げさに反応し、顔一杯に笑顔を広げ、たのしそうな笑い声を漏らす。
一方で、
「おい、スミレ、前ちゃんと見て歩かねぇとさっきみたいにこけるぞ」
「はぁ? そんなわけないでしょ。お兄ちゃんじゃあるまいし」
俺にはドスの利いた声で返事をしてくる。って、なんでだ? 洋一と同じことを言ったはずなのに・・・・・・
洋一に向ける笑顔はまぶしくて、輝いていて、それはまるで、さっき教室の窓から見かけた三組のあの子みたいで。
洋一は、洋一でうれしそうに顔を綻ばせている。まるで、あの三組のあいつにそっくりの笑顔で。
こ、これって・・・・・・
「お、お兄ちゃんは許しませんよっ!」
「はぁ? 突然なに言ってんの?」「なんだよ、急に」
二人してあきれ顔で俺のこと見返してくる。
うう、洋一だけは絶対に俺の仲間だと思っていたのに・・・・・・


こうして、その日、俺は一番の親友の裏切りにあったのだった。最悪な形で。
く、くそーっ! なんで俺だけ。
「つうか、なんでお前、俺の後ろにちゃっかり乗ってるんだよ。重いだろ」
「別にいいでしょ。同じ家に帰るんだもん。それと、私全然重くないもん」
「降りろよ」「嫌よ」
分かれ道で洋一と別れ、俺たちは二人乗りしながら自転車を進めていた。
俺の背中に抱き付くスミレの体温は高く。心も体も冷え切っていた俺をポカポカと温めてくれる。昔は、こんな風に『お兄ちゃん』『お兄ちゃん』ってくっついてきて離れなかったんだよなぁ 昔は。
「はぁ〜 これがクラスの女子のだれかだったらなぁ」
「はぁ〜 これが洋一くんの背中だったらなぁ」
「あのさ、それ洋一に言えばいいじゃん」
「バカ。大バカ兄貴。女子に声もかけられないヘタレのくせに」
可愛くない一言が後ろから聞こえてきたけど、聞かなかったことにして、俺はペダルを漕ぐ足に力を込めた。本当は頼れる兄貴なのだから。そんな俺の背中に頬をうずめるようにして、ぎゅっとスミレが抱きついてきた。
――うん。まあ、こういうのも悪くはないな。
でも、
「ホント、これがクラスの女子だったらなぁ」


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2016年11月20日

モニュ




おととい、二か月前に結婚して家を出ていった姉貴がうちへ帰ってきた。お義兄さんが出張中らしい。
夕方には、母さんからいくつかの我が家の味の家庭料理のレシピを教えてもらい、そのまま一晩泊まって、昼前には帰っていった。のだけど、昼食時をすぎたころ、俺のところへメッセージがきたのだ。部屋に忘れ物をしたから、家まで届けに来いって。
自宅から姉夫婦の家まで電車で片道半時間。途中、大きなターミナル駅でJRから私鉄に乗り換える必要がある。
まあ、そのターミナル駅は俺が通っている学校の近くにあり、普段から友人たちとよく遊んでいるエリアだから、別にいいのだが。でも、なんか納得がいかない。自分が忘れ物をしたのだから、自分でとりに帰って来ればいいだろうに。すぐに戻ってこれる場所なんだから。


それでも、心優しき俺は、姉貴の部屋の化粧台の上に忘れられていたポーチをもって姉貴の家を訪ねたのだ。ついでに、帰りに何人か友人を呼び出して、遊ぼうかなと考えつつ。
「って、なんで、田島がここにいんだよ」
「失礼ね。ここだって田島家よ」
「それはそうだけど・・・・・・」
姉貴が結婚したのは、うちと同じ町内に住む田島さん。つまり、姉貴にとっての幼馴染みだ。その田島さん(お義兄さん)には俺と同い年の妹がいて、そっちの田島妹が今、ここ姉貴の田島家のリビングのソファーに腰かけていた。
「お兄ちゃんに届けものしに来ただけよ」
田島妹の前に綺麗にラッピングされたクッキーの袋が積まれている。
「香苗ちゃん、私がとても喜んでたってお義母さまに伝えてくれるかしら」
「はい」
不自然な作り声の姉貴と差し向かいで紅茶を飲んでいたりして。
いや、ふたりとも、普段はもっとだみ声なくせに・・・・・・
ともあれ、姉貴に忘れ物を渡して、一緒に紅茶のご相伴に預かりつつ、午前中に焼いたというクッキーをつまんだ。
うん、母さんが作る我が家のとはちがって、焦げもなく、硬すぎもせず。ついつい、手が伸びる。止まらない。
「しかし、これうまいな。とくにこの干しブドウ乗ってるヤツ」
「あ、それ、私が焼いたの」
「・・・・・・(ポリッ)」
「・・・・・・(ポリッ)」
クッキーを咥えながらチラリと盗み見ると、口をモニュっとさせているのが見えた。
ポリッ
口の中にやさしい甘みが広がった。


姉貴に見送られて、田島と並んで帰り道をたどる。
同じ学校に通っていた小学校でも、中学校でも、登下校が一緒になるなんてことはまったくなかったのに、なんで今さら、なんて思わなくもなかったのだが。
でも、まあ、事実、帰り道は同じわけだし。ついでというか、なんというか。ああ、そうだ。あいつらと遊ぶのはまた今度でいいな。うん。
「ほら、次、終点だぞ」
「うん」
「この時間、JRの乗り換えでかなり混むから、はぐれないようについてこいよ」
「分かってるわよ。そんなこと」
なんて言い合いながら、私鉄の電車を降りて、改札をくぐり抜けたのだが、
「キャッ」
早速、背後で小さく悲鳴めいたものをあげているし。
「大丈夫か?」「大丈夫。ちょっとつまづいただけよ」
背伸びしておしゃれなヒールのある靴を履いてくるから。ここまで来る途中でも何度か転びそうになってたし。
「ほらよ」
「なっ・・・・・・」
「行くぞ」「・・・・・・」
俺に支えられ、引っ張られて、田島は俺の後ろをおとなしくついてきた。


ようやく、JRに乗り換え、電車に乗ると、ちょうど二人掛けの席が空いていた。だから、そこを確保して、腰を下ろす。すぐに、電車はホームを離れた。
「ふう。空いててラッキーだったな。いつもこの時間、満席なのに」
「・・・・・・」
「足大丈夫か? さっき転んだの、怪我してない」
「・・・・・・(こくん)」
「顔赤いぞ? 大丈夫か?」
「・・・・・・」
「なんだよ、さっきから黙ったままでよ。なにか、俺、気に障るようなこといったか?」
プルプルと首を振るのだけど、ためらうようにゆっくりと無言で、その腕を目線の高さまで持ち上げてきた。
その小さく華奢な白い手、繊細な磁器のようにひんやりとした手。その手は今、ごつくガサツな手に包まれていた。って、俺の手か。
「あっ・・・・・・」
いつからだ? いつから、田島と俺、手をつないでいたんだ?
私鉄を下りた後、こいつがこけそうになって、助けてやって、このままじゃはぐれてしまいそうだから思わずつかんで、そんで、それから、それから・・・・・・ そのままで。
「わ、わりぃ 気が付かなかった」
「・・・・・・(プルプル)」
極力自然な仕草で、何事もなかったかのように膝の上に手を下ろして、そして、手の指を一本ずつ苦労して広げていった。
自然に、自然に。必要以上に意識しないように気を付けて。
全部の指をのばし終わった。あとはこのまま手を宙へ持ち上げれば、ミッション・コンプリート。
ふと顔を上げると、真っ赤に頬を染めて俺の方をさかんに盗み見ている顔の口元はモニュっと歪んでいた。


電車は俺たちの最寄り駅に向かって疾走している。
ガタゴトガタゴト、大きな音を響かせながら。
そして、俺の手の中に小さくて柔らかく優しい甘い感触をずっと伝えつづけながら。


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2016年11月13日

七五三参り




仕事や私生活面でいろいろあって、先月、東京のマンションを引き払って、こっちへ戻ってきた。
一生を賭けた夢が破れても、ふるさとはちゃんと変わらずここにある。
その事実だけで、なぜか涙があふれて止まらなかった。
とはいえ、こっちに戻ってきたからといって、毎日のんびりだらだらと過ごしているわけにはいかない。そんなの最初の一週間で終わりだった。
毎日、家の中でぼうっとしているだけの娘に向ける家族の視線は、とても厳しかった。家族みんなそれぞれに忙しく働いているというのに、私だけ家事もせず、なにもせず。そんなの許されるはずはなかった。
だから、今は、この神社にバイトに来ている。巫女さんのバイト。
社務所の受付で待機して、参拝者さんたちにお守りを売ったり、お祓いの受付をしたりしている。


十一月のこの時期、神社は少しだけ忙しい。もちろん、年末年始や秋祭りのころほどではないが、七五三のあるこの時期も参拝者が多い。
お昼から戻り、巫女仲間が淹れてくれたお茶をすすって談笑していた間にも、着飾った子供を先頭においた小集団がぞろぞろと参道を歩いて行った。
もし、私が東京へなんか夢を追って出ておらず、ここにずっと残っていたなら、もしかすれば、今頃私は、あの誇らしげな顔の母親の一人になっていたかもしれない。両親に孫の顔を見せることができていたかもしれない。
今、ここでお守りを売っているのではなく、子供の手を引いて、晴れやかな表情を浮かべて、参道を歩いていたかもしれない。
後悔していなかっていえば、ウソになる。でも、あのとき、東京に出てよかったとは思っている。自分の実力を信じて、全力で夢に挑戦したのは間違いではなかった。しっかり胸を張って誰に対してもそう言いきれる。
――ズズズ。
湯呑みのお茶をすすって、受付に向かった。
ちょうどキチンとしたみなりの男性がこちらに向かって歩いてくるところだった。
しっかりとのりの利いた洗練されたデザインの高そうなスーツに身を包み、ブランド物のコートをまとった男性。たぶん、私と同年代。けど、なぜだか、どこかで見覚えがあるような気がする。
その男性、私の前に立つと、
「祈祷の予約をしていた池永ですが」
「御祈祷ですか? ちょっとお待ちください」
今日の予約を確認した。池永、池永・・・・・・ あった。
「はい、準備の方は済んでおりますので、どうぞご本殿の方へおすすみください。まもなく宮司がまいりますので」
「そうですか、ありがとう」
軽く会釈していく姿、全身に自信がみなぎっているようで貫禄が感じられる。だけど、やっぱり、その姿、どこかで見覚えがあるような。
「池永、池永・・・・・・」
予約された人名を眺めながら、必死に思い出そうとしていたら、やがて、気が付いた。
「そっか、中学時代の同級生なんだ」
中学二年の一年間、私たちは同じクラスだった。
クラスでもそんなに目立つようなタイプではなかったし、直接言葉を交わしたことも、数えるほどでしかなかった。
その程度の知り合いのことを覚えていたこと自体、正直、驚くべきことだけど、それには事情がある。当時の友人の一人・真理恵が彼のことをとても気に入っていたのだ。だから、そのせいでなんとなく注目して見ていたから、すぐに分かったのだろう。
ちなみにその友人は、大学卒業した後、誰もが名前を知っている上場企業の第一線でバリバリ働いている。
そっか、こんな時期に着飾って神社にお参りするってことは・・・・・・
そうだよね。私たちってもうそんなトシなんだよね。七五三を迎える子供がいてもおかしくないのよね。
しみじみとそんな感慨にふけざるをえなかった。
きっと向こうは私のことなんか気づいてもいないだろうな。どこにでもいる巫女さんの一人というぐらいにしか思っていないだろうな。
ま、それで構わないんだけど。


一時間ほどして、宮司さんのお祓いが終わったのか、帰りの集団が社務所の前に差し掛かってきた。
集団の中に池永君の姿も見える。
そっか、あの綺麗な人が池永君の奥さんなんだ。
着飾ったかわいらしい女の子の手をひきながら、ハッとするような美人が通り過ぎていった。
いつまでも、おしあわせにぃ
心の中でそう祈りながら見送っていると、
「すみません。このお守りいいですか?」
いつの間にか、受付の向かいに池永くんがたっていた。その手にしていたのは、『良縁』のお守り。
「五百円です」
硬貨を受け取り、お守りを包んで渡す。なぜかうかがうようにして私のことを見つめている。
「もしかして、竹村さん?」
「えっ?」
「やっぱりそうなんだ。久しぶり、覚えてる俺のこと?」
「え、え〜と」
もちろん、覚えているのだけど、でも、今は七五三の帰り。すぐ近くに奥さんがいるだろうに。こんなところで別の女と話なんかしてていいのかしら? ちょっと心配していたら、それをどうとったのか。
「ああ、やっぱり覚えてないか。そうだよな。中学の一年間しか一緒のクラスでしかなかったしなぁ」
すごく残念そう。しょげちゃって、捨てられた子犬みたいな目で私のこと見てくるし。だから、つい、
「ううん。大丈夫、覚えてるから。池永君でしょ」
「あ、うん。そう。池永。俺、池永」
しっぽがあればブンブン振り回してそうな勢い。それがちょっとおかしくて、噴き出しちゃった。
「ひさしぶりだね。中学以来? 竹村さん、こっち帰ってたんだ」
「ええ、先月」
「そっか。知らなかった」
というか、なんで私が地元を離れていたって知っているんだろう? ほんの短い間だけの同級生ってだけでしかないのに。しかも、会ってすぐに私だと気が付くなんて・・・・・・
「変わらないね」「そっちは、ずい分貫禄みたいなのついちゃって」
「あはは、だいぶ太ったからな。ダイエットしないとな」
「ううん。でも、男の人はそのぐらいでないと」
「そっか? へへへ。ありがとう」
「どういたしまして」
うん。でも、本当に今着ているスーツを着こなしているし、似合ってる。お世辞じゃない。
もっと前に知り合っていれば・・・・・・
ううん。そんなことはないわね。だって、この人には美人な奥さんと可愛い娘がいて。
それを思い出したら、ちょっとウキウキしだしていた心が急激にしぼんでいくのを感じていた。
「でも、いいの? 奥さん待たせてるんじゃ?」
「ん? 奥さん?」
「ほら、さっき一緒にいた」
「俺、まだ独身だよ」
「えっ? でも、今日は七五三のお参りに・・・・・・」
私の言葉を少し考えて、すぐに顔を綻ばせた。
「ああ、あれは、俺の姪っ子。姉貴の子供なんだよ。俺の子じゃないよ」
「そ、そうなんだ」
ってことは、さっきの綺麗な人は池永君のお姉さんか。
「俺、ずっと仕事忙しかったしな。相手見つけるヒマさえなかったんだよ。でも、最近、ようやく仕事の方も落ち着ていきたし、そろそろいいかなって思えるようになってね」
そうして、じっと私のことを見つめてくるもんだから、心臓が跳ねちゃった。
「実は、俺、中学の時からずっと好きだった子がいてさ」



「ねぇ、聞いて、聞いて。私、ついに結婚することにしたの」
携帯電話ごしに弾んだ声が聞こえてきた。
「それもこれも全部チーちゃんおかげね。ありがとう」
「はいはい。どういたしまして」
投げやりな声が出たのは仕方ないよね。
先日、池永君の話を聞いた後、仕方なしに真理恵に連絡をとって、二人の間を取り持ってあげたら、ひと月も経たないうちに、こんな連絡が来たのだもの。
ずっと真理恵のことを思い続けていた池永君。ずっと池永君のことを忘れられずにいた真理恵。お互いがお互いのことを思い続けていたんだもの。中学からずっと。
本当、バカみたいに。呆れるしかないわね。
ともかく、ふたりとも末永くお幸せにね。はぁ〜
そんなことより、私のことずっと一途に想っていてくれる人ってどこかにいないかなぁ


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