2016年07月31日

大鳥居前

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「おすっ、お待たせ。もしかして、だいぶ待たせた?」
「ううん、私も今来たとこ」
なんて、まるでカップルみたいなやりとりをしたのだけど。もちろん、私が吉村のバカなんかとそんな間柄じゃなくて、
「つうか、なんで吉村がここにいるのよ!」
「それはこっちのセリフだっての、バカ」
「バカってなによ」「なんだよ」
「「ふんっ!」」
学校でいつもするように言いあってしまった。学校じゃないのに。しかも普段の制服姿とは違って、浴衣を着て、少しはおしとやかに見えるように気をつけていたのに。
ホント、なんでここにいんのよっ!


ここは近所の神社の大鳥居の前。今晩、これから夏祭りに繰り出すので、玲奈たちと待ち合わせ中なのだ。
だというのに、吉村のバカが近くに立ってスマホの画面を覗いている。
「吉村、アンタ、なにしに来たのよ」
「ん? 隆吾たちと待ち合わせ。そっちは?」
「玲奈たちと」
なんだか嫌な予感が。田所隆吾くんと玲奈って去年から付き合っている仲。だから、夏祭りには二人でいくだろうから、玲奈を誘わずに他の子たちと遊びに来る予定だったのだけど、どこからか聞きつけて『私も参加ね。で、大鳥居の前で七時集合』なんて一方的に決めてきたのだ。
吉村のバカもなにか感づいたような顔をしている。やっぱりか。
「「はぁ〜」」
ため息がシンクロしてしまった。
「ちょっと真似しないでよ」「そっちこそ」
「「ふんっ!」」


ここは玲奈たちに連絡して、今からでも集合場所変えるように交渉した方がいいかな。
巾着の中をゴソゴソ探して、私のスマホを探していたら、なにか視線を感じた気がして顔を上げた。視線があって、バカは慌てた様子で目をそらす。
「ちょっとこっち見ないでよ」「なんでだよ」
「別に理由なんてないわよ。単にアンタに見られたくないだけ」
「はぁ? なんだよ、それ」「なによ」
「「ふんっ!」」
ようやく巾着の底にスマホを見つけて取り出したのだけど、やっぱり、またじっと見られてる。無視して、片手で指を動かしてメッセージを作成していたら、
ピコン。
手元のスマホが音を立てた。誰かが私にメッセージを寄こしたのだ。
『その浴衣すごい似合ってんな』
隣のバカだった。
「えっ?」
驚いて顔を上げたら、
「そんなのウソに決まってんだろ」
慌てて私に顔を見られないように顔をそむけた。でも、私から見えるバカの耳は真っ赤。
「バカ」
そう口の中でつぶやいて、返事を送った。
『ありがとう。うれしい』
って。
「えっ?」
「私だってウソだもん!」
もちろん、自覚してる。今の私の顔、目の前の吉村のバカ以上に赤くなっているって。
「そっか」「そうよ」
そうして、二人して微妙な距離を開けたまま、それぞれの手元のスマホに視線を向けるのだった。


ピコン。
またメッセージが届いた。今度は玲奈からだ。
『いい雰囲気みたいだから、私たち、先に行ってるね』
「ちょっと、玲奈」
顔を上げたら、隣からも、
「おい、隆吾」
呻きみたいな声を漏らしているし。
「「はぁ〜」」
「やられたな」「やられちゃったね」
今日初めて、二人して笑みを交わしていた。苦笑の。
そしたら、
「じゃ、行こうか」
白い歯を見せて、手を差し伸べてくるし。
その大きな手のひらを見ていたら、胸の奥でコトンと音がした気がした。それがなんだか気恥ずかしいような悔しいような。
「調子に乗らないでよ」
思いっきり叩いてやったんだ。フンだ。
「いてっ」
そうして、手の甲をさすっている腕をすかさずとる。思い切って腕をからませる。いつもよりも近くで感じる吉村の体温、匂い。心臓がドキドキする。
「いこ」
私の囁くような声での誘いに、吉村くんは空いてる方の手を私の頭の前に回してきた。
なにすんだろう――デコピン。って、子供かっ。
「いたぁ〜 なにすんのよ」
「お返し」
意地悪な顔して、隣で楽しそうに笑っている。
「もう。バカ吉村」
「ふふふ」
でも、どちらも腕を解こうとはしなかった。解きたいなんて少しも思わなかった。
たぶん、これから先もずっと。喧嘩しながらずっと。
「行こっか」「うん」
「それと、さっきのやっぱりウソじゃないからな」「とっくに知ってるよ」
「そっか」「そうよ」


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2016年07月24日

村おこしゲーム

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一昨年、大学を卒業した先輩から久々に連絡があり、先輩の会社が開発しているゲームのベータテストに協力するように頼まれた。
もちろん、二つ返事で即座にOKした。
先輩の勤めているゲーム会社は業界でも指折りの大手だし、そんな会社が今作っているゲームに興味があった。それよりもなによりも、来年に控えている私の就職活動には、こんな機会こそが有利に働くんじゃないかって下心があったりとかも。
とにかく、それやこれやで先輩の会社持ちの交通費をありがたくいただいて、ベータテスト会場に足を運んだのだった。


会場は近くに有名な別荘地がある高原の村。
その別荘地の町の方の表通りには、バカンス客向けのおしゃれな飲食店やお土産屋さんが所狭しと立ち並んでいるというのに、この会場の村にはまったくその手のものがない。せいぜい地元民向けの日用品だけでなく食料品も扱っているコンビニもどきの雑貨屋が一つあるぐらい。とてもさびれた活気のない村だった。
その役場の駐車場には、今日のベータテストに参加する私と同じような年格好の数十人が集まっている。先輩が声をかけたのだろう顔見知りも何人かいて、どうやら、彼らも私と同じような腹づもりだったみたい。さっそく、あちこちでさや当て的ないざこざが起こり始めていた。
ともあれ、今日は私だって絶対に負けないんだから。
しばらくお互いに火花をバチバチ飛ばしながら待機していると、時間になり役場の入口から先輩の所属するチームと役場の年配の人たちが出てきた。
参加者たちの集団から口々に『おはようございます』って声が上がる。
あんッ、出遅れた。
最後に『おはようございます』って叫んだの私だった。
その声が聞こえたみたいで、先輩が私に向かってニコリと微笑んでくれる。それに同じような笑みで返している間に、役場の年配男性が前に進み出てきていた。村長だという。
「みなさん、今日は私どもの村の村おこしゲームのベ、べえた? ベータテストにご協力いただきましてありがとうございます……」
カンペを読みながら、たどたどしく挨拶している。たぶん、村長さん自身、これからどういうことが行われるのか、ちゃんとは理解してないのだろうな。
って、そんなことより、村おこしゲーム? なにそれ?
先輩の会社といえば、今や全世界で大ヒット中で世界各国でさまざまな騒動を巻き起こしつつあるあのゲームの製作元だというのに。
ここにくるまでキチンと説明されてはいなかったけど、てっきりあのゲームの続編かなにかのベータテストだと思っていたのに。
参加者たちの間で、失望のため息がこぼれた。
村長さんの挨拶が終わると、先輩がでてきて、参加者たちにそれぞれが持っているスマホに開発中のゲームアプリをダウンロードするように指示してきた。スマホ持ってない人には最初からインストール済みのスマホを貸し出してもらえる。
指示に従って私のスマホにダウンロードしてインストールすると、『お宝発掘 ホリホリーナ(仮)』っていうゲームアプリが起動した。
なんでも、このゲームはGPSの位置情報と連動していて、バーチャルリアリティ技術を活用したものでもあるそうな。
与えられたヒントをもとに村内に設定されている特定の場所に行き、その場所をカメラで撮影しながら歩き回ると画面上に掘れる場所を表すいくつかのスコップのマークが現れる。そのマークの場所に一定程度近寄り、画面をタップすると地面が掘られ、埋まっているアイテムや新しいヒントがもらえ、経験値が稼げるというシステムだった。
「今回、我々新事業部は、例のあのゲームのヒットの経験を元に、あのゲームのシステムを活用しつつ、AIなどの先進的でユニークな研究を行ういくつかの大学の研究室と共同で、新しい事業に挑戦することになりました。そう、この村おこしゲームがその最初の試みであります。こういったゲームを開発することで、プレイするために現地に人々が直接足を運び、村おこしに少しでも役立てるのではないかと我々は期待しています。が、それはこちらの事情であって、みなさんには今は関係のないことではあります。そこで、ぜひみなさん、これをテストだなんて思わず、このゲームを楽しんでいただけると幸いです」
先輩はそう最後に締めくくって、説明を終えた。
そして、いよいよゲームが始まった。


最初に、チュートリアルを兼ねて役場の駐車場の隅にスコップが出現し、宝箱が埋まっていた。開くと次の場所に関してのいくつかのヒントの他、経験値百点、コイン数枚と昼食券、それに大型シャベル(五回分)が手に入った。
このコインは村の各地に設置されている自動販売機と連動しており、実際にコイン十枚で飲み物が買えるらしい。昼食券は村にひとつしかない食堂兼民宿で昼食がとれ、大型シャベルは掘る時間が大幅に短縮されるアイテムなんだとか。ただし、使用回数に制限があって、制限回数に達すると壊れてなくなってしまう。
というわけで、早速、新しいヒントを元に次の場所へ向かうことにした。
そうして、着実にゲームを進め、昼前には十回ほど地面を掘り返すことができた。
ただ、『はずれ』もありで、なかなかアイテムやコインがたまらない。それでも、経験値だけは順調に溜まり、もうLv4までレベルアップしている。
特設サイトのランキングで確認すると、先頭グループはすでにLv7を越えているようだ。
でも、まあ、こんなのんびりした田舎をスマホ片手にぶらぶら歩きまわるなんてそう滅多にない経験。それだけでも十分気持ちいい体験だ。今度はプライベートで遊びに来てもいいかもね。でも、なにもない場所だけど。
やがて、次の場所が近づいたのか、ポケットの中でスマホが震える。
取り出して、地図で確認すると、すぐそばのかやぶき屋根の農家を越えたあたりの林の中みたい。道沿いに行くと遠回りになってしまうけど、農家の庭先を突っ切れば、一直線。そして、幸い、敷地には住民の姿はなく。
「お邪魔します」
口の中で小さくつぶやいて、庭に足を踏み入れた。
だが、
「誰だい、あんた? うちになにか用かい?」
家の中に住民がいた。網戸を通しておばあちゃんがこちらを見ている。
「あ、そ、その。ちょっと庭を通らせてもらおうと」
「おや、もしかして、アンタ、智恵かい? しばらく見ないうちにずいぶん大きくなって」
「え? あ、いいえ、違います。私、福田珠希っていいます」
「いつぶり以来かね。もうずいぶん前になるね。洋子……お母さん元気かい? あの子にもたまには母親に顔を見せるように言っとくれじゃないかい」
どうやら、私、おばあちゃんの孫かなにかと勘違いされたみたいだ。
「あ、あの。私、今、先輩の会社が開発しているゲームのテスト中で」
「なに庭でぼうっと突っ立ってるんだい。さあ、上がっておいで。おばあちゃんにその顔を見せておくれ」
えっと。耳が遠いのかしら? それとも思い込みが激しい?
「あ、あの。だから、私、おばあちゃんのお孫さんじゃなくて……」
「さあさ、お菓子もあるよ。アンタおまんじゅうとか好きだっただろ」
「え、えっと……」
そうして、なぜかそのおばあちゃんちにお呼ばれする羽目になってしまった。
散々、私、孫じゃないって主張してたのに……


テーブルに乗っていた手作りのおまんじゅうは素朴な味だけど意外と美味しくて、なんでもこの町にただ一軒だけある雑貨屋で手に入るのだそうな。帰りに買って帰ろ。
急須で淹れてくれたお茶もちょうどよい湯加減でおいしい。
けど、この家にいた間、ずっと私のことをお孫さんと勘違いしっぱなしで、最後までそれを訂正できなかった。
「ほら、こないだ地震があっただろう。神戸の」
「ああ、えっと、たしか阪神大震災」
「たしか、あれは一昨年だったかね。あのあと、敏雄も都会へ引っ越してしまって」
「あ、一昨年じゃなく、二十年ほど前ですよね」
「花子もどこがよかったんだろうね。あんなトウヘンボク」
全然、私の話聞いてくれないし。
そうかと思うと、
「ほら、この町もおじいさんが生きていたころには、ダムで沈んじゃうって計画が持ち上がって、村の人みんなで反対運動を起こしたもんだね。磐舩神社に何度も集まって、役場と直談判して。あのころにはあんなに人がいたのに、この村も今じゃこんなに寂れてしまって」
などという昔話を聞かせてくれたりとか。
最終的に私がおばあちゃんから解放されたのは、それから三十分ほど後になっていた。
三十分のロス。
その間に、おばあちゃんちの庭先をさっきの私と同じようにテスト参加者たちが通り抜け、そのたびにおばあちゃんが声をかけるのだけど、私がいる間には、だれも家に上がるものはいなかった。つうか、この家の家主の老人が声をかけているのに、しかも彼ら彼女らは明らかに不法侵入なのに、挨拶一つ返さないってどうなの?
我ながら、なんか腹立たしいな。
ともあれ、去り際にご馳走になったことを丁寧にお礼を言って、私は次のポイントへ向かって歩き始めるのだった。


その後もゲームのテストは続き、日没寸前にゴールすることができた。
ゴール順では最後尾争いだったけど、得られた得点やコインの多さでは全体の五番目だった。
途中で、次のポイントのヒントとして『この村の住民が何かを決めるときに集まった鎮守の社』なんてものがあって、他の参加者たちはいくつかの神社を回らなくちゃいけなかったのに、私だけは磐舩神社に直行できたのが大きかった。あのおばあちゃんさまさまだね。
今度、お礼に行かなくちゃ。


その日は、隣の別荘地にたくさんある民宿の一つに泊まって、翌日、私はまたこの村に戻ってきた。ベータテストは一日だけで、今日は完全にプライベート。
まあ、実際には現地でまだ作業をしている先輩に顔を見せて、来年の就職活動のつながりを確保しておこうという魂胆も無きにしも非ずで。
あとは、ついでに、あのおばあちゃんにまた会いたいなって思ったりも。私のおばあちゃんは二人ともすでにこの世にはいない。あんな風におばあちゃんと話すのって、実は久々で、とても懐かしい気分だったのだ。
タクシーで村に入り、役場に顔を見せると、先輩の姿はなかった。その代り、役場の人が先輩が今作業している場所を教えてくれた。
都合のいいことにあのおばあちゃんちの近くだという。
早速、現地へ向かう。
昨日と同じように農家の裏手に出たから、庭越しに覗いてみると、
――いたっ! 先輩が。
「先輩、なにしてるんですか、こんなところで?」
近づきながら先輩の手元を覗き込んでみると、しわしわの生首を抱えていた。胴体にはつながっていない生気のない生首。ただ、まるで首から垂れ下がる血管のように電気コードが伸び、庭中を縦横に走りまわっていた。
殺人現場? いや、でも、全然そんな感じじゃない。むしろ、これは……
不意に生首の目と口が開いた。
「おや、もしかして、アンタ、智恵かい? しばらく見ないうちにずいぶん大きくなって」


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2016年07月17日

キャラ談義




授業の合間の休憩時間中、自分の席で今朝買ってきたマンガ雑誌を読んでいると、前の佐々木が振り返ってきた。
「おっ、それ今日のヤツ? 次、俺に貸してくれよ」
「ああ、分かった」
そんな会話が耳に届いていたのだろう、右前の席で近藤とバカ話をしていた太田もこちらを見て、
「じゃ、俺、佐々木の次な」
「なら、俺は大田の次だな。牛島、順番がつかえているんだから、早く読めよ」
「なんでだよ! 買ってきたの俺だぞっ!」
ったく。こいつらは!


「やっぱあれでしょ。女の子がいっぱい出てくるしよ」
「ああ、でもアレ、正ヒロイン可愛くないよな」
「そうか? 俺的には断然アリなんだけど」
「「ねぇ〜よ」」
俺がこの雑誌の看板マンガに目を通している間に、佐々木たちがマンガ談義に花を咲かせ始めた。
「やっぱ、金髪ツインテのツンデレっこが至高だろ」
「いいや、違うね。クーデレの黒髪美少女一択」
「分かってないなぁ 全然分かってない。この話は世話焼き幼馴染みの正ヒロイン以外ありえないでしょ。正ヒロインがいないと話自体が成り立たないでしょ」
「ないわ〜」「ないな」
「なんでだよ」
「はぁ? 幼馴染みって負けヒロインだろうが」「だよな」
まあ、たしかによくいうな、仲の良い幼馴染みが登場すると、大抵は最終的に主人公にフラれるって。
やっぱり、異性として意識していない子供ころからの遊び相手で、気心が知れすぎていて、ずっとそばに居続けると、兄妹や姉弟みたいな感覚になってしまって、恋愛対象になりにくいからかな。
それに、フィクションとして魅力的に見せるためには、けなげな性格設定がされやすく、そのせいか、主人公から一歩ひいたような立ち位置にいるし。その上で、長年の経験と観察から主人公の考えていることがなんとなく分かるような設定をされやすく、それを尊重することで関係を維持しつづけてきたわけだから、主人公が他の女の子に惹かれれば、その気持ちまで尊重しちゃう展開が自然なんだろうな。
ホント損な役回りだ。
けど、今読んでるマンガの幼馴染み正ヒロインはどのサブヒロインよりもはるかに魅力的なのだが。残念だ。


「で、牛島の意見はどうなんよ?」
「俺?」
「そそ、どのヒロインが一番可愛いか?」
俺が読み終え、佐々木に雑誌を渡すと、早速大田が尋ねてきた。
「そうだな」
もちろん、近藤と同じ意見で幼馴染みの正ヒロインが一番なのだが。かぶってたんじゃ面白くない。ここは俺の二番目に気に入っているキャラで。
「中二幼女かな」
「うわ、ペドフィリアだ」「ロリコン反対!」
「なんでだよ。可愛いだろう。痛々しい発言で、しかも幼女なんだぞ」
「いや、ないわ」「ないな」
「お前らのツンデレもクーデレもあんまり変わらんと思うが」
「「全然違うだろ!」」
なぜか、二人して攻撃してきたし。
今は幼女でも十年もすれば、立派に淑女に成長してるだろうに。なぜ、こうも激しくなじられなきゃいけないんだ?
ん? いや、待てよ。十年たっても少女か。むしろ、サザエさん時空の話だから、幼女のままだったりとか・・・・・・
そう考えてみると、確かにないな。


つうか、さっきからそんなことをだべっていて、結構熱くなってたわけで。なんか、周りの席の女子たちからの視線が痛いんですけど。
「やっぱ、ツインテツンデレ最高!」「いや、幼馴染みの正ヒロインでしょう」
ツインテールの斎藤さんが教室の後ろの席で軽蔑しきったような顔してフンってそっぽを向いたけど、横に向けた表情がなんかにやけているような。
でも、斎藤さん、君は隣のクラスの竹本とつきあってるんでしょ?
「一応、中二幼女も入れといてやってくれよ。いや、なんでもない」
童顔幼女体型の大沢さんが目をパチクリさせて俺に困ったような顔を向けてきてるし。
いや、なにも大沢さんのことを痛いヤツって言っているわけでは・・・・・・
今は佐々木が読み終えたマンガ雑誌は大田の手の中にある。
「いいなぁ。俺もクーデレな彼女ほしい」
なんかマンガ読みながら寝言をつぶやいている。けど、残念ながら、この教室には対象にあてはまる女生徒は・・・・・・
まあ、いないわけじゃない。けど、そういう子たちって本当に俺たちの話にはまったく興味なさそうなんだよな。肝心のクーデレのデレなんてどこにもないわけで。
ともあれ、結論としては、このマンガは読者それぞれにとって魅力的なヒロインたちが必ず登場する優れた作品ってことになるんだろうな。
なんだけど。
そのとき、俺の隣の席でずっと黙って文庫本を呼んでいた本庄さんが頬を染めながら顔を上げた。
それから、なにかを吹っ切るように口を開く。
「あのさ、近藤。私、あんたのこと幼稚園のころから知ってるよ?」
近藤と本庄さん、マジマジとお互いの顔を見つめあっている。見る間に二人とも耳まで赤くなっていく。
なんだこれ?
周りで俺たちがニヤニヤして二人を見守っているのに気が付いたようだ。そして、近藤のヤツぼそりと棒読み口調で言うのだった。
「本当はヤンデレ妹か高飛車お嬢が推しだな」
クラス中が声を合わせた。
「「「うそつきめっ!」」」


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