2015年10月25日




「行ってらっしゃいませ、奥様、お嬢様がた」
「うん」
玄関ポーチまで見送りに来てくれた執事に私たちは、ありがとうの意味を込めて、会釈した。
今日はお城で舞踏会が行われる収穫祭の日だ。
貴族の若い男たちに見初められることを夢見て、着飾った都に住む娘たちがこぞって舞踏会に参加し、空が白むころまで踊りつづける。
今、私の隣で送迎の馬車のシートに腰かけようとしている二人の娘たちも、華やかなドレスに身を包み、ほれぼれとするぐらい見事に化粧している。
これなら、このどちらかがあの王子に見初められて、お妃になるだろう。
娘たちの美しい様子に暗く満足して、私は御者に出発するように命じた。


お城の王子は、とても評判の悪い男だ。
素行が悪く、怠け者で、しかも放蕩者。その上、悪知恵だけはよく働き、舞踏会で城下に住む裕福な商人の娘を見初めてお妃にし、その実家から財を搾り取れるだけ搾り取って放蕩の限りをつくし、挙句にその娘を殺して、次の犠牲者をまた舞踏会を開いて選ぶということを繰り返してきた。
商人たちにすれば、富を奪われるだけでなく、その娘たちの命までとられるのだ。たまったものじゃない。だから、そのうち自分たちの娘が舞踏会へ出ることを禁止するようになった。そうすると、今度は、娘がいる大商人たちの家に王家の印で封じた招待状を送り、それに応えようとしない商家には、王家の命令に背いた罰として全財産を没収するまでになった。
そして、ついに先週、私の夫のもとにもその招待状が届いた。
都のより成功していた多くの商人たちは、王子のせいですでに没落し、いよいよ次は私の夫の番だと覚悟していたので、衝撃はさほどではなかった。
だから、こうして私たちは、悲壮感を胸いっぱいに込めてお城の舞踏会へ向かっている。
それでも、娘たちの顔からは、これから向かう華やかな舞踏会への期待で興奮しているのが見て取れ、そして、わずかに不安の表情を浮かべている。娘たちもこの舞踏会が意味していることを理解しているのだろう。
娘たちには、本当に申し訳なく思う。私が今の夫と再婚したばかりに、こんな事態に巻き込んでしまって。
悲しい気持ちで、窓の方へ顔をそむける私を気遣ったのだろうか、娘たちは、私の手を優しくさすってくれるのだった。精いっぱいの笑顔を浮かべて。
その顔を眺めていられなくて、私は目を閉じた。
――でも、これでいいの。これで、夫の本当の娘であるあの娘の命を守ることができるのだから。連れ子にすぎないこの子たちの犠牲で、先妻の忘れ形見であるあの娘を心から大事に思っている夫が深い悲しみに落ちることから救えるのだから。
まぶたの裏に、出かけるときに見かけたボロボロの召使の格好をしたあの娘の姿が浮かんだ。執事にいいつけられて暖炉の手入れを手伝っていたのか、頭から薄く灰を被っていた。


舞踏会は盛況で、沢山の町娘たちが立派な衣装を着た若い男たちとダンスを踊り、賑やかに笑いさざめいている。
私たちが到着すると、早速に王子が挨拶に出迎え、娘たちを眺めて、満足げに薄汚い笑みを向けた。娘たちもひきつった微笑みを返し、王子に礼儀正しく挨拶した。
それから、二人の娘たちそれぞれと王子はダンスを踊り、何事かを取り巻きの若い貴族に囁いて、ホールの奥、玉座の傍らにある王子の席へ引き上げていった。
どうやら、妹の方がお気に召したようだ。
気のやさしく、とても思いやりのある子。親孝行で、笑うとできるえくぼがチャーミングで・・・・・・
涙があふれそうになったから、慌てて顔をそむけた。そしたら、視界に偶然、その子がホールへ入ってくるのが見えたのだ。
「どこのお嬢さんかしら? とても綺麗だわ」
「清楚で美しい娘さんね。どこの家の方かしら?」
「可憐なまるでお花のような。素敵な方だわ」
周りにいた町の人たちが、早速その娘に目をとめ、なかば憧れるような声で吐息のようなものをもらしている。
――本当に美しい人。
私もその女の人に見とれてしまっていたのだけど、急に、娘のうち姉の方が私の袖を引いて耳打ちしてきた。
「ねぇ、あの今入ってきた人って、あの娘にそっくりじゃない?」
「えっ?」
「ほら、泣きぼくろとか、髪の色とか、歩き方とか」
改めてしっかり眺めてみる。姿形こそ見違えるほどに華麗に着飾ってはいるが、よくよく見ると、たしかにあの娘にそっくりだ。いや、あれはあの娘だ。
――でも、なぜ? あの娘は、今、夫の屋敷で留守を守っているはずなのに。それに、あの娘の持ち物の中に、あのようなドレスも、宝石も、ガラスの靴も、なにもなかったはずなのに。
ホール中の視線を集めながら、その娘は伏し目がちにしずしずと進んでいく。
一方、奥の方で、取り巻きの連中と談笑していた王子も、その娘に気が付いたようだ。途端に驚いたような顔をして、まるで心ここにあらずというようにフラフラとした足取りで、ホールの中へ歩みを進めていった。
そして、二人は出会い、二言三言会話を交わしたあと、不意に始まった曲に合わせてダンスをするのだった。
それから三時間以上、二人はぶっ続けにホールの中央でダンスをした。王子は熱の浮かんだ顔で、その娘を見つめ続け、目を離せなくなった様子。もう私の娘たちには興味をなくしたようだった。
その光景を眺めながら、私は何度も自問しつづけていた。
――どうして? なんで? なんで、あの娘がここに? なぜ、なぜ、あの娘が王子と踊っているの? もし、このまま、あの二人が結婚するようなことになったら・・・・・・
夫のひどく落胆した顔が頭の中に何度も浮かんで、うずまいた。
――あの人を悲しませたくはない。でも、どうすれば・・・・・・


突然、お城の十二時の鐘がホールの中に鳴り響きはじめた。
ボーン、ボーン・・・・・・
王子と踊るあの娘は、その鐘の音に驚いたような表情を浮かべた。そして、王子の止める声も聞かず、背を向けて、ホールの外へ逃げ出してしまった。さらに、王子もその背を追ってホールを飛び出していく。
ざわざわした雰囲気の中で、戸惑いつつホールで待機していると、やがて、王子が一人で戻ってきた。あの娘はどこにもいなかった。代わりに、王子が手にしていたのは――ガラスの靴。
王子は、ガラスの靴を捧げ持つと、ホールにいた全員に聞こえるように、声を張り上げるのだった。
「余は、この靴に足が合う娘を妃に向かえ、永遠の愛を誓うであろう」


あの娘の捜索は、次の日の朝から始められた。
都の家、一軒一軒をガラスの靴をもった王宮の従者たちが尋ね回り、娘たちにその靴を履かせてみる。
だけど、不思議なことにその靴にサイズがぴったり合う娘は一人も現れなかった。
娘たちが足を通そうとすると、足の大きな娘のときは、足のサイズ以上にガラスの靴が大きくなり、逆に足が小さければ、足よりもはるかに靴自体が小さくなった。
明らかにその靴には魔法がかかっていた。この靴に合うのは、その本来の持ち主以外ありえなかった。
やがて、その捜索隊は夫の屋敷がある通りにまでやってきた。通り沿いの家を一軒一軒訪ねてまわり、その家に娘がいれば、ガラスの靴を試させる。もちろん、誰一人として、その靴は足のサイズに合わなかった。
ついに、屋敷にまでやって来た。
「この家に若い娘がいることは調べがついておる。すべての娘は我の前に整列し、この靴に足を通せ」
王宮の従者はえらそうな態度でそう命じてくる。それに従い、二人の娘たちが静々と進みでた。
まずは、妹の方から。
この妹の足と比べると、あの娘は少し足が大きいようだ。当然、今までの例だと、履こうとすると、ガラスの靴がすぼまり、靴に足が入らないはず。だというのに、するりと中に足が入った。しかも、どういうことだろう、ガラスの靴にその靴下の履かれた足がぴたりと納まっている。
「おおーーっ ついに、お妃を見つけたぞ」
街中を歩きまわり、いい加減、うんざりしていた従者たちはお互いに抱き合うようにして大喜びしたのだが、最初に横柄な態度で私たちに命令をしてきた男が、妹が履いていた靴下に目を止めた。
「娘、なぜ靴下を履いている? それでは本当にピッタリと足のサイズが合っているかどうか分からぬではないか」
「うっ・・・・・・」
妹は顔をしかめて、その靴下を脱ぎ棄てた。そして、改めて足を入れようとすると、ガラスの靴は小さくなり、妹の足を拒絶するのだった。
妹が脱いだ靴下を見ると、やっぱりだ。あの娘の靴下だった。
妹は、悔しげに顔をしかめている。
次は姉の番。姉はあの娘よりも足がすこし大きいはず。
だがその場に現れた姉の足先には、血のにじんだハンカチが巻かれている。どうしたのだろう? 怪我でもしたのかしら? けど、あのハンカチには見覚えがあるわね。あれは・・・・・・っ!
私たちが見ている中で、姉はその靴に足を入れた。
「おおーーっ 今度こそ、お妃さまだっ!」
従者たちは再び湧きあがった。姉の足がぴったりとガラスの靴に納まっていた。


「ありえない。その方たちは、あの娘が現れる前には、あのホールにすでにいたではないか!」
そんなあの尊大な従者の驚きの声で、事態は明るみになった。
姉は、どうしても靴の大きさに合わせようと、つま先をナイフで削り落としていたのだ。
この子はそこまでして、あの娘を守ろうとしたのだ。
お妃になれば、不幸な運命しか待っていないから。ううん。それだけじゃない。前の夫が死んでしまい、極貧の中でのたうちまわっていた私たち親娘三人を救い出してくれた今の夫からの恩義に応えるために。文字通り、自分の身を削ってでも。


「この家に、他に娘はいないのか? 小間使いや下賤なものでもいい。他にいないのか?」
ついに、あの娘が家の奥から引き出されてきた。
そして、もちろん、あの娘の素足に、そのガラスの靴はぴたりとはまった。
とんとん拍子に準備は進められ、二か月後には、あの娘と王子の結婚式が執り行われた。
国中の人たちが、あの王子の何度目かの結婚を祝い、そして、あの娘のこれからの不幸を憐れんだ。
私の夫は、あの娘が王宮に去ってから、すっかりふさぎこむようになり、毎日暗い顔ばかりしている。あれ以来、何か月も経っているというのに、この屋敷は火が消えたみたいだった。
――どうして、こんなことに・・・・・・
あの娘との結婚以来、王子の悪い噂は聞こえては来ないが、それもいつまで続くものか。幸い、まだ王子からの無茶な要求はない。この平穏が長く続いてほしいものだ。決して、夫のこれ以上の暗く沈んだ顔を見たくはない。
あの娘の前に現れたという善き正しき魔女に私は言いたい。
あなたのやったことは、本当に正しいことだったの? あれで、本当によかったの?
そして、祈る。
本当に、あなたが正しい行いをするというのなら、どうかあの娘の身の上には不幸な運命が巡ってこないように見守っていてください。私の夫のためにも。それがあなたの最低限の責任でしょ?
その祈りの途中に、お城の方角から危急を知らせる鐘が聞こえてきた。体の中で一気に緊張感が増す。もし、あの鐘が二度だけ鳴らされたならば、それは王族の誰かに不幸が訪れたことを意味する。これまでにも何度も鳴ったことがあった。そして、三度も鳴ったなら誰かに幸運が訪れたということを意味するのだ。たとえば、妃が懐妊したというような。
やがて、二度目の鐘が鳴らされた。
眼を閉じて、神に願う。どうかどうか、さらにもう一度鐘の音を。
三度目の鐘は――


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2015年10月18日

被服室にて




「次は被服室でも行ってみようかな。たしかあそこには・・・・・・手芸部か。ああ、あの奥山先生が顧問してるとこだったな」
普段とは違って、人通りの多い廊下の隅で学園祭のパンフレットを眺めながら、次に訪問する部屋をいろいろと検討してから、俺はそうつぶやきながら顔を上げた。
いつもは生徒たちに注意を向けながら歩くこの廊下も、こんな日ぐらいは、多少羽目を外していても、とやかくうるさく言わないことにしていた。だから、ちょうど今、俺のすぐそばをはしたないぐらいに短いスカートをはいて、三年生の子が通り過ぎていったが、顔をしかめるだけで小言を言ったりはしなかった。それでも、そんな俺に気が付いていたのか、その子は気まずげに体をすくめて通り過ぎていく。
って、なんだ、それは? なぜ、廊下の真ん中でくるりと一回転してみせた? 俺にウィンクなんかを送ってどうするつもりだ? その投げキッスはなんのつもりだ?
最近の子の考えていることはさっぱり分からない。どういうことなんだ?
とにかく、今すぐ追いかけていって、さっきの子に、
『長い歴史と伝統が受け継ぐこの学園の生徒だという自覚を持て』
そう叱りつけたい・・・・・・ けど、今日はぐっとこらえる。
一度、深呼吸して、気持ちを落ち着けて、再び廊下を歩き始めた。


被服室。手芸部の主な活動場所だ。
手芸部の学園祭といえば、毎年、部員たちが手作りしたかわいい小物を販売したり、ファッションショーを開いたりと多彩な活動をしている。
――ああ、そういえば、今年もぬいぐるみ製作したのか?
手芸部では、毎年、学園での出来事や人物をモチーフにしたオリジナルのぬいぐるみを製作して、被服室内に展示する。そのぬいぐるみは、モデルになった学園内の人物の特徴をよくつかんでおり、パッと見ただけでも、それはだれをモデルにしているのか、すぐに分かるできになっていた。
去年はたしか、校長先生が全校集会のとき、講堂で足を滑らせて転んでしまい、かつらがずれてしまった場面だった。もちろん、あの時はだれもがそれを見なかったフリで通したし、本人に聞かれるような場所で話題にしたりはしなかった。
だが、よりにもよって、そんな場面を再現したぬいぐるみが展示されていたなんてな。そのことは、当然、だれも本人には告げなかったはずだし。校長先生が去年の学園祭の期間中、被服室を訪れたという話は聞かなかった。だから、本人はまだ教師全員や全校生徒がかつらのこと知っているなんて夢にも思っていないのだろう。


扉が開いたままになっている被服室の中へ足を踏み入れると、大勢の生徒たちが押し寄せているのが見える。
ちょうど、ついさっきまでグラウンドに設けた舞台でファッションショーが開催されていたはずだから、その流れで、見物していた生徒たちがここまで足を運んできているのだろうか。
「はい、抱き枕カバー一点ですね。四,九八〇円になります」
「こちらのストラップですね。一個二百円になります」
「毎度、ありがとうございます」
眺めているうちに、飛ぶように品物が売れていく。手芸部の部員たちも大忙しの様子だ。
迷惑にならないように、被服室の中を移動して、展示物の方を見て回る。
刺繍作品あり、レース作品あり、手作り小物あり。どれも女の子らしく、かわいらしい。
――おっ、結構カッコいいものもあるな。このブックカバーなんか、通勤電車の中で使えば、周りのOLさんたちから熱い注目を集めるかもな。
などと頭の中であれこれ想像しながら展示スペースを歩いていると、あった、あった。今年も手芸部名物の学園ぬいぐるみ。えっと、今年のぬいぐるみは・・・・・・
――ああ、この凛々しいたたずまいの女生徒は生徒会長か。それで隣に立って親密な感じで書類の内容を説明しているのは・・・・・・副会長かな。
二人とも、本人たちの特徴がつかまれていて、すぐに見分けが付いた。付いたのだが・・・・・・
――なぜ、二人の背後にピンクのハートマークが? 二人とも女の子なのだが? というか、この学園、女子校だから、女子生徒しかいない。
いや、まあ、たしかに、あの二人、とても親密なのはその通りなんだが。俺も、なにかの拍子で二人が見つめあっている場面に出くわしたこともある。ひとけのない廊下を手をつないで歩いているのを見かけたこともある。だが・・・・・・
その二人のぬいぐるみを眺めている周りの生徒たちはにやにやしながら、隣の友達と何事かをささやき交わしあっていた。だれも俺と違って戸惑っている様子はなかった。
これは一体・・・・・・?


ともあれ、多少混乱しながらも、その場を離れる。
さらに、すすんで他の展示物を眺めていると、入口のあたりから賑やかな声が聞こえてきた。
「ああ、ここね、手芸部」
同僚の井手先生の声だ。愛嬌があるが、そそっかしくて、おっちょこちょい。生徒の模範にならなきゃいけない教師の立場なのだから、もっとしっかりしてほしいものだ。なのに、いくら小言を並べても、彼女は全然改善がみられない。
「はぁ〜」
その声を耳にしただけでため息が自然と・・・・・・
本当、よくそんなので、この学園の教師に採用してもらえたものだ。やっぱり、この学園の卒業生なのが有利に働いたのか?
井手先生、俺が中にいることにも気が付かずに、まっすぐ奥の販売スペースに進んでいく。そして、
「ねぇ、ここで抱き枕カバー販売しているって本当?」
部屋中に澄み渡るような透明な声で販売を担当している生徒に質問するのだった。
「あ、はい・・・・・・」
その生徒、気後れしたのか、蚊の鳴くような声で返事をしたようだ。ちらりと展示スペースにいる俺のことを見て、慌てて顔をそらせた。
――あんな井手先生みたいな頼りない人でも年上の相手は苦手だから、助けを求めているのか?
一歩、近寄ろうと足を踏み出しかけた途端、
「じゃ、星野先生のやつまだある? さっき職員室で北川先生がここで買ってきたって見せてくれたのだけど。私にもあれ売ってちょうだい」
一斉に売り場の生徒たち、頭を抱えた。被服室中の女子生徒の視線が俺に集中する。さっきまで賑やかだった被服室の中が急にシーンと静まり返る。
――えっ? えっと・・・・・・ なに、それ? なんで俺が抱き枕カバーに?


「お、お前ら、なに売ってんだよ。よりにもよって、お、俺の抱き枕カバーって・・・・・・ こんなの売れるはずないだろう?」
狼狽しながら叱る俺に、手芸部の部長が冷静に反論してくる。
「お言葉ですが、先生。この抱き枕カバー、本日二番目の売れ筋商品なんですよ」
「はぁ? なんで?」
たちまち顔をしかめて、舌打ちひとつ。
「これだから、このにぶちんは・・・・・・」
「えっ? なんか言ったか?」
「いいえ。別に」
「とにかく、もう、こんなの気色悪いモノ販売するな。いいな」
「はい。分かりました」
部長は不服そうに唇を尖らせている。そして、なぜかその隣で井手先生も。
「って、先生もなんですか、その不服そうな顔は?」
「ええ〜、だってぇ〜」
はぁ〜 子供かよ。ったく。ともあれ、にぶちんと非難されたのは俺的には心外なわけで。
ため息をそっとついてから、
「そんなに、俺に甘えたかったのですか? いいですよ。そんなまがいモノなんかじゃなくて、いつでも俺の胸で甘えてくれて。けど、俺の方こそいつでも甘えられる胸を探し求めているのにな」
壁際に追いつめて、壁に手をつきながらそう相手の耳元で囁いたら、耳まで真っ赤になって、顔をだらしなくしている。ちょっと生徒たちには見せられない顔だな。周りを囲んでいた生徒たちも口元に手を当てて黄色い声を上げ始めていた。
はぁ〜 ま、たまにはいいか、こういう余興も。
けど、俺にはまだちょっと気になってることがあって、
「それはそうと、俺のが今日の二番ってことは、一番はなんなんだ?」
振り返った俺に、キラリと目を光らせた部長が耳元でささやいてくるのだった。
「もちろん、我らがマドンナの奥山先生の抱き枕カバーです」「・・・・・・」
「へへへ、お安くしておきますよ、旦那」
うん、この部長、商売上手だ。そんなことを言われたら、もう速攻で買うしかないじゃないか。


ところで、俺の抱き枕カバー誰が買ったのか、正直気になるのだが?
生徒たちの保護者だろうか? 生徒たちだろうか? それとも、女性教師たち? もしかして、俺のファンってこの学園に結構いるのでは?
いいや、そんなことはない。うん。きっと、俺のカバーをつけた抱き枕をサンドバッグ代わりにして、ストレスを発散しているに違いない。うん。きっとそうだ。
いいや、そもそも、そんなことよりも、もっと重大なことがあるぞ。なにがなんでも知らなくちゃいけないことが。それは・・・・・・あの奥山先生がこれを手に入れたかどうかだ。そのことを知っているのは――


結局、俺の抱き枕カバーの販売再開を許可するまで、部長がそのことを教えてくれることはなかった。
ホント、ここの部長、商売上手だ。


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posted by くまのすけ at 19:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編・ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月12日

算数パズル試作02

算数パズルの試作2号です。
ルールは前回と一緒で、縦方向の移動はその列の一番上の欄の指示に、横方向の移動はその行の一番左の欄の指示に合致する数字のマスにだけ移動できます。
※ただし、ピンクのマスでは、そのマスの数字と移動してくる一つ前のマスの数字との最大公約数のマスなら、どこでも移動できます。もちろん、そのジャンプを利用しないという選択もOKです。

左上の1から右下の27へ移動してみよう。
〇通過するマスは全部でいくつかな?












↑+1↓↑×2↓↑-3↓↑÷3↓↑+5↓
以上
↑+4↓↑×3↓↑-2↓↑+1↓
←+2→135799753
←-1→2654302928102
←×4→481228323339123
←+3→49242730401613104
←-6→
以下
501531042063823
←-3→27300182124211824
←÷2→2814714281281625
←+7→18114152229243126
←-2→17221453533312927






posted by くまのすけ at 22:36| Comment(0) | TrackBack(0) | パズル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする